SOFT DARTS PROFESSIONAL TOUR JAPAN 2022 STAGE13で初優勝してからSTAGE 15、STAGE 16と2連覇達成。直近の4戦で3勝。
D-TOUR開幕戦でもTOP 4 に入るなど、絶好調の後藤智弥選手。一体何が起きたのか?どんな変化があって今に至っているのか?!知りたい!ということで色々とお話聞かせてもらいました。ちょっと常人には理解できないようなお話も盛りだくさん...
全てのダーツプレイヤーにとって非常に大切なお話が聞けました!少し長くなりましたが最後までぜひ読んで頂けたら幸いです。
それでは、早速どうぞ!
「右足をガチガチに...」
――後藤選手、2連覇おめでとうございます!今のお気持ちを聞かせてください。
後藤智弥選手(以下『後』):ありがとうございます。めちゃくちゃ嬉しいです!でもちょっとできすぎだなって思っています。
――今シーズンはSTAGE 2では3位タイに入るなど序盤から好成績が続いていました。中盤で少し調子を落とされていた印象もあったんですが、そこから4戦3勝。率直に伺います。一体何があったんですか?
後:STAGE 12の岐阜大会の前日、右足首ひねって捻挫してパンパンに腫れたんですよね。で、応急処置で整体に行って右足をガチガチに固定してもらって。そしたらそれがいい方に出始めたのか、岐阜大会をベスト8で終えることができて。
――そんなことがあったんですね。全然わかりませんでした。右足を固定したことが結果的に良かったんでしょうか。
後:それが原因かはわかんないんですけど、もしかしたらそうなのかなって感じで。もう足は治ったんですが、それからずっと右足にはサポーターをして試合に臨んでいます。
――そこから約3週間後のSTAGE 13で初優勝されました。
あの日はあれよあれよという間に決勝に行っちゃったイメージなんですがご自分でも今日はなんか違うなっていうのは感じていたんでしょうか?
後:そうですね、初優勝したSTAGE13の1~2週間前あたりから練習会的なものに参加していたんですが、その時に自分のダーツと向き合えるようになったんですよね。
感覚だけで投げていたのを理論的に理解することで、こうしなきゃいけないとか、失投した原因を理解することができて、それからなんか変わったっていうのは感じていました。
ほんとできすぎくらいの結果だって思っています。
「ずっと楽しかった」
――そのあと1大会あけてSTAGE 15で2度目の優勝。そしてSTAGE 16で2連覇(3勝目)を達成します。STAGE16ではTARGETの選手との対戦も多かったですよね。
後:そうですね。STAGE 16の準々決勝で恵太さんと対戦したんですけど、普段から一番お世話になっている人で。今までもPERFECTのロビンやJAPANの横浜の開幕戦の入れ替え戦で当たったりしてたんですけど、今回はお互い勝っても負けてもベスト8以上ってのは決まってたんでちょっとフラットに、ある意味お互い思い切りやり合えたのかなっていう風に僕は思ってて。
なんていうか、ぶっちゃけすごく楽しかったんです。
――試合が終わったあとのお二人のやり取りを見てほほえましいなと思っていました。
後:本当だったら負けたら悔しいはずなのに、試合のあと恵太さんがああいう風に僕を称えるように接してくれて...この人についてきて良かったって思えた瞬間でもあったし本当に尊敬できる人だなって思いました。お互いにいいダーツをして、いい試合ができたことをすごく感謝しています。
――小野選手も後藤選手から刺激を受けているようなことを仰っていましたね。
後:ユースのPDJの時もそういうワードを出してくれて...僕が頑張れば恵太さんがヒリついてくれるんだ、そういう風に思ってくれるんだと思うとより頑張れますよね。先輩として本当に尊敬できる方です。
――そしてSTAGE 16の決勝は PDC World Cup of Dartsでペアを組んだ鈴木徹選手との対戦でした。どんな気持ちで臨みましたか?
徹さんとは決勝が始まる直前までずっと一緒に話していて。笑
バーレーンどうでしたか?とか。試合前に徹さんがダーツケースがないとか言って、みんなで探したり。
ヒリつくとか全然なくてお互いに出せる力出して思いっきりやろうよって、言わずもがなって感じで楽しかったですね。
――決勝なのにずっと楽しかった、っていうことですか?
そうですね、いいダーツができたらいいなと思ってその場その場の一投一投を楽しめました。僕が9マーク出しても徹さんも出してくるんだろうなーとか。冷静でしたね。不思議とずっとプラスプラスの気持ちでいけたというか。
試合で楽しく投げるっていつもやりたいことなんですけど、一番難しいかも知れないですね。今はやりたいダーツができているからこそ楽しいと思えているのかなって思います。
Photo:JAPAN公式
「段違いに落ち着いている」
――緊張はしないんですか?
後:緊張はしてたんですけど、前まで緊張がもう1、2段階くらい上にあってもっと制御がきかなかったんですよね。初優勝は勢いで行ったなって感じがあったんですけど、2回目、3回目はびっくりするぐらい落ち着いていましたね。冷静に状況を捉えられているというか。
自分の中で具体的に何が変わったっていうのはわからないんですけど、メンタル面がすごく落ち着きましたね。
――具体的に言うとどういう風に変わったんでしょうか。
後:緊張もしているし、震えるのは震えているんですけど、前より段違いに落ち着いてるんですよね。相手がミスしたところをしっかり勝ち取れているし、気負わずワンチャン突っ込めてたり。
ここ決まったらできすぎだなーとかこれキープされてもしょうがないよねとか場面場面で自分で自分を納得させることができている感じです。勝手にアドレナリンが出ない感じというか。制御されているというか。
――それ...いわゆる「ゾーン」というものなのでは...?
後:そうなんですかね。笑
試合がアップテンポになるからどんどんアップリズムになっていってバチバチになるとかじゃなくて、ラウンドラウンド意外に落ち着いていて。
「これ決めたら優勝なんだ、連覇だ」とか、賞金のこととか、不思議と何もチラつかないんですよ。ただ「勝ちたい」ってだけでした。勝つということをベースに、対戦相手の選手と投げ合えることを純粋に楽しんでいたのかも知れないです。
「冷静に捉えられている」
――なるほど...優勝できるかも知れないという感覚はあったんですか?
後:僕は結構ネガティブなので、優勝できるとは思ってなかったですね。初優勝も勢いだと思っていましたし。2勝目は時間がかかるだろうなと思っていました。でもサクッとできてしまって...
3勝目も。うまく行きすぎてるなっていう感じはありますね。(汗
――ここのところの後藤選手を見ていると、全体的に上がりの良さを感じています。STAGE16ではインナー・インナー・15Tで決める試合もありましたよね。しっかり攻めきれてるなと感じました。
後:インナーはまぁ常にそこを狙って投げているので1本目入って。
2本目はなぞっただけですね。3本目は緊張してるし、深呼吸して落ち着いて。でも意外と震えてはなかったですね。
2勝目した時のSTAGE 15の決勝で対戦した哲平さん(西哲平選手)の時の最後のB-B-15Tの時の方がめちゃめちゃ緊張してました。
【後藤 智弥 VS 西 哲平】JAPAN 2022 STAGE15 神奈川 FINAL
第4LegのCUで145をB-B-T15で決め、2勝目を飾った瞬間
――STAGE 16の時はどうしてそんなに落ち着いて投げられたんでしょうか。
後:なんなんでしょうね。正直全然わからないんです。勝った秘訣とかもわかんないんですよね。笑
ただ、試合運びはだいぶ落ち着いてやれるようになりました。ブレイクされても冷静に捉えられているというか。対戦相手にしこたま打たれてキープされてブレイクされて...っていう状況だと以前までは「次のLegで抑えつけなきゃ」とか勝手に自分にプレッシャーかけて緊張してたんですけど、そういうのが全くなくなりました。
――いい意味で少し余裕が出てきたということでしょうか?
後:そうですね、試合慣れして来てるというのもあるんですかね。ここ外してたら負けてたなーとか、あそこでよく入れられたなーとか、冷静に試合を振り返ってうまくやれた自分を褒められるようになりました。
「滅茶苦茶だ、下手くそだってずっと言われていた」
――アップの仕方も変えられたんですね。
後:そうですね、アップの仕方はちょっと変えましたね。今まではずっと、ブルを投げたり、クリケナンバーを投げてたんですけど。上のナンバーの次は下、っていう感じで交互に投げています。ブル・ブル・19Tとか、19・19・20とか18・18・17という風に、下下上、上上下って感じで。1本目をしっかり入れるようにすることや、9マークを意識したり、上がりのイメージでダブルを投げたり。そういう感じでアップするようにしています。
――練習会での気づきがあってからすごく色んなことを一気に変えたという感じがします。
後:自分のダーツをちゃんと考えたことがなかったんですよね。滅茶苦茶だ、下手くそだってずっと言われていたんです。投げ方がなってない、感覚だけで投げているって。
練習会で自分のダーツがどうなっているかを客観的に見ることができるようになってから、こんなに勝ててるって感じで。
――でもここが良くないという「気づき」があっても自分が今までやってきたこと、身についてしまったことってなかなか変えられなかったりしませんか。
後:クセは抜けてないんですよ。でも、(修正しようという)意識がかすかにあるからカバーしきれてるっていうところもあるみたいです。ダメな部分に自然と意識が行っているので、悪いクセが出にくくなっているのかなと。
「今のスタンスのまま、
ただ上を見て」
ただ上を見て」
――自分のダーツと向き合ったことがキッカケで修正がうまく行って、メンタルにもいい影響を与えているんですね。最近の快進撃の理由が少しわかった気がします。
さて、あと2戦残っています。来季への意気込みも合わせてどんな風に臨んで行こうと思っているかお聞かせください。
後:望むのは残り2戦も優勝!ですが、このレベルの高いJAPANで、本当に尊敬できるすごい選手ばかりなのでいつでもチャレンジャーの気持ちで闘っていきたいなと思っています。
初優勝から始まって、ずっと目標にしてたことを成し遂げることができて素直にやっぱり嬉しいんですが、優勝して終わりじゃないし、年間ランク1位を取りたいし、それがゴールなんで。それが日本一ってことだと思うんで。次はそこを目指して、ここから天狗にならずに、ひたすら結果を追い求めてもっともっと勝ちまくりたいです。
今のスタンスのまま、ただ上を見て、自分のダーツができるよう一戦一戦集中して戦えたらなって思います。
(了)
いかがでしたか。
驚きの連続でした。お話を聞いていて、ひとつポーンと、別のところに行ってしまっているような、悟りを開いているかのような...そんな感じすらありました。
ご本人も今の結果は出来すぎと仰られていましたが、言わずもがな実力があるからこその結果だと思いますし、自分のダーツをうまく修正するキッカケに出会えたタイミングとそれを自分に落とし込む作業がうまくハマったんだなという印象です。
ただ、後藤智弥選手のダーツはこれで完成形ではないのでしょう。まだまだ磨きをかけて、これから先どんなダーツを見せてくれるのか...楽しみでしかないですね。
今後も後藤智弥選手の応援、よろしくお願い致します!